2025/11/12
朴葉の香りがする焼き芋を作りました
朴葉で焼き芋を包んで焼くと、ほんのり上品な香りがついていつもと違う焼き芋になる。あまり知られていないこの調理法を実際に試してみた。

連日クマのニュースが世間を賑わせている。
今年は特に目撃件数と被害ともに多いように感じる。飛騨でも町内放送で連日の報告がアナウンスされ、林務課の方は対応業務で大忙しだそうだ。
そんなクマのニュースを聞きながら、僕はふと、最近知った韓国語を思い出した。
それは先月訪れた韓国で知ったのだが、さつまいもを韓国語で「コグマ」というらしい。かわいらしい響きで、言われてみればコグマのような形にも見えなくもない。
この「コグマ」という言葉、実は日本語の「孝行芋」が訛って伝わったものだそうだ。
江戸時代、対馬で飢饉を救ったさつまいもが「孝行芋(こうこういも)」→「コーコモ」→「コグマ」と変化していったという。
そんな歴史と世間を賑わせる焼き芋(コグマ)を、今回は朴葉で包んで焼いてみた。
朴葉焼き芋との出会い
朴葉で焼き芋を包んで焼く——そんな食べ方があることを、友達から教えてもらった。
彼女は前も朴葉の天ぷらを教えてくれた、朴葉アンテナの高い友人だ。
朴葉で芋を巻いてアルミホイルで包んで焼くと聞いた瞬間、
「なにそれ、面白い。めっっちゃ簡単そうでやるハードルも低いし」と僕は思った。
朴葉といえば朴葉味噌や朴葉寿司が有名だが、焼き芋に使うという発想はなかった。
調べてみると、確かにInstagramでいくつか投稿は見つかるし、ブログで紹介している方もいる。
ただ、まだまだ一般的な食べ方とは言えない。
それならやってみようじゃないか。ちょうど森で拾ってきた朴葉があるし、焼き芋はちょうどこの秋の季節にぴったりだ。というわけで、さっそく材料を揃えて試してみた。
朴葉の入手方法については別記事で紹介予定だ。
材料と準備はシンプルだ
用意するものは、ほぼ普段の焼き芋と変わらない。
- さつまいも(今回は安納芋を使用)
- 枯れ朴葉
- アルミホイル
- 水(朴葉を浸す用)
- オーブン
ただ、朴葉が追加されるだけだ。
作り方もシンプルだ
違うのは、ただ朴葉が追加されるだけだ。
1. 朴葉を水で浸す
まず、朴葉を水に浸してやわらかくする。朴葉は乾燥していると割れてしまうので、使う前に水で浸してやわらかくしておく。
これは包みやすくするためでもあるし、焼いたときに水分を保って芋をしっとりさせるためでもある。
数分浸せば十分やわらかくなる。

水に浸した朴葉
2. さつまいもを朴葉で包む
さつまいもを朴葉で包んでいく。芋の大きさと朴葉のサイズによるが、1〜2枚使うことになる。
大きめの朴葉なら1枚で包めるが、小さめの場合は2枚重ねて使うといい。

朴葉で包む

葉柄をハサミで切っておくとアルミホイルに穴が開きにくくなる

しっかり密着させるように巻いていく
3. アルミホイルで包む
朴葉で包んだら、その上からアルミホイルで包む。これをしないと朴葉が焦げて燃えてしまう可能性がある。
正直なところ、朴葉の研究をしている身としてはアルミホイルを使うのは少し複雑な気持ちだ。
できれば自然素材だけで完結させたいところだが、安全性を考えるとアルミホイルは必要だろう。
朴葉がオーブンの中で燃えるところなんて誰も見たくない。

アルミホイルでも包む。現代文明に感謝
4. オーブンでただ焼く
オーブンを200度に設定し、予熱をせずにそのまま1時間半ほど焼く。
じっくり時間をかけて焼くことで、芋の甘みが引き出されるはずだ。(焼き芋の時間はオーブンの特性とその人なりのレシピがあるはずなのでなんだっていい。迷ったら200度で1.5h)
今回はオーブンを使ったが、焚き火で焼いたらもっと楽しいだろうなと思う。しかも朴葉の葉っぱをかき集めてやってみたい。
朴葉の炎のゆらめきを眺めながら、朴葉の香りが立ち上る焼き芋を待つ秋の昼下がり。
想像しただけでワクワクするが、あいにくそんな土地と元気はない。
5. 完成
焼き上がったら、アルミホイルと朴葉を外して完成だ。

焼き上がりの朴葉も燃えていない!
朴葉はそこまで汚れないのでもう一度使い回すこともできる。これまた素晴らしい!
実食
さっそく食べてみる。
まず気づくのは、ほんのり漂う朴葉の香りだ。
強すぎず、上品な香りが鼻をくすぐる。これがいい。

普通の焼き芋とは明らかに違う、ちょっといつもと異なる特別な感じがする。
面白いのは、香りが主に皮に付いているということだ。中の黄色い部分はそれほど香りがしない。
皮をかじったときに、ふわっと朴葉の香りが広がる。
だから、この食べ方では皮まで食べないと意味がないんだろうな。
余談になるが、焼き芋の皮を食べるかどうかは人それぞれらしい。
ある調査によると、「必ず食べる」が31%、「時々食べる」が42%、「食べない」が27%という結果だった。つまり約3割の人は皮を食べない。理由は「焦げて苦い」「食感が好きでない」など様々らしい。
僕は基本的には端っこと土がめっちゃついていない限りは食べる家庭に育ってきたが、この前韓国で友人に驚かれた。
でも、この朴葉焼き芋に関しては、皮を食べないともったいない。香りという楽しみを捨てることになるからだ。
次に、気になる食感は、焼き芋とふかし芋の中間のような感じだ。
朴葉とアルミホイルで包んでいるため、いつも以上に水分が逃げずにしっとりとした仕上がりになる。ホクホクというよりは、ねっとり系の食感だ。
芋によるかもしれないが……
今回使った安納芋は、正直なところ期待していたほど甘くなかった。
初めてこんなのを食べる、というほど美味しくない、という印象だった。飛騨のような寒冷地で種子島原産の安納芋はうまく育たないんだろう。
でも、朴葉の香りがあることで、いつもと違う味わいになっていた。これはこれで悪くない。
アレンジと補足
この朴葉焼き芋、アレンジの余地は十分にある。
まず思うのは、やはり焚き火で焼いてみたいということだ。オーブンでも十分美味しくできるが、焚き火の遠赤外線でじっくり焼いたら、また違った味わいになるだろう。何より、焚き火を囲んで朴葉焼き芋を食べるという体験そのものが楽しそうだ。
アルミホイルなしで焼けないかという疑問もあるが、さすがに朴葉だけだと焦げて燃えてしまうリスクが高い。安全性を考えると、アルミホイルは必須だろう。研究者としては少し悔しいが、現実的な選択だ。
使う芋の品種によっても味わいは変わるはずだ。今回は安納芋を使ったが、紅はるかでも試してみた。

紅はるかでもやってみた。うまい。
やはり焼き芋っていうのは焼き方どうこうよりも基本的に「どんな芋を使うか」っていうのが美味さに直結する。
そこにプラスアルファで「朴葉」というスパイスを付け加えてみるのがおもしろい。
僕はこれを**「朴葉焼き芋」**と名付けて新たな現代の食べ方として定着するように祈る。

おわりに
朴葉で焼き芋を包む。とてもシンプルだが、ちょっとした工夫で普段の焼き芋が特別なものになる。
おしゃれなビジュアルと、ほんのり香る朴葉の上品な香り。
それだけで、いつもの焼き芋が少しだけ違うものに感じられる。作り方も難しくない。
朴葉があれば、誰でも簡単に試せる。
ちょうど秋の落ち葉の季節を家の中でも感じられる食べ方でもある。今は枯れ葉を掃除してその葉っぱで暖を取るなんてこともほとんどなくなった。
進みすぎた現代に、この朴葉が手に入る今、ぜひ一度試してみてほしい。