2024/12/13

スウェーデン(SVENSK)食(FOOD)

ルシア祭りのルッセカットを焼きました

スウェーデンのルシア祭りに欠かせないサフラン入りパン「ルッセカット」を低温発酵法で作るレシピです。こねる時間を減らし、初心者でも失敗しにくい作り方を紹介します。

焼けたルッセカット

スウェーデンのスーパー「ICA」で山積みになっているルッセカット。
黄金色に輝くS字型のパンは、12月初旬になるとスウェーデン中のカフェやベーカリーに並ぶ。あの独特のサフランの香りと、ほんのり甘い生地。

一度食べたら忘れられない味だ。好きか嫌いかは別としても。

ICAで売られているルッセカット
ICAで見つけたルッセカット。レーズンは取れている

しかし、どう見てもパサパサで美味しくなさそう。
サフランを使っているかも怪しいほど黄色も薄いルッセカットでは満足しないので、自分で焼いてみることにした。

ただし、普通のレシピとは少し違う。低温発酵法を使うことで、こねる時間を大幅に短縮できる。パン作り初心者でも失敗しにくい方法だ。

こねるなんて、機械がなければやってられない。という考えなので基本的には低温発酵中のパン頼みだ。

ルッセカットとルシア祭

そもそもルッセカットを知らない人がほとんどだと思うので簡単に説明してみよう。

ルッセカット(Lussekatt)は、12月13日の聖ルシアの日に食べられる伝統的なサフラン入りパンである。旧暦では12月13日が一年で最も夜の長い日とされ、この日を境に徐々に日が長くなっていく。

ヴァイキング時代、人々は太陽が再び戻ってくることを願って太陽の形をしたパンを焼いた。現代では様々な形があるが、最も一般的なのが両端に渦巻きのあるS字型だ。この形は「ユールガルト」と呼ばれることもあるが、一般的には「ルッセカット(ルシアの猫)」として親しまれている。

北欧の長い冬の闇の中で、黄金色に輝くサフランパンは太陽の象徴であり、希望の光なのだ。

僕はルッセカットのこの話を聞いて、ゴッホの星降る夜を思い出した。ルッセカットの色がどうも、あのローヌ川の星月夜のようなのだ。
星降る夜

レシピを見ていこう

低温発酵法のメリットはこねなくてよい

今回紹介するレシピの最大の特徴は、低温発酵法を採用している点だ。通常のパン作りでは、生地を15分ほどしっかりこねる必要がある。
しかし、この方法なら:

  • こねる時間が大幅に短縮される
  • グルテンが自然に形成される
  • 作業を分散できる
  • 失敗しにくい

という利点があるのだ。

冷蔵庫で7℃前後、半日から1日寝かせることで、生地がゆっくりと発酵し、風味も増す。
時間はかかるが、実際に手を動かす手間は少ない

これが低温発酵の魅力だ。

それでは材料に移ろう。

材料(40個分)

材料 分量
サフラン 2 g
ブランデー 20 g
ドライイースト 24 g
牛乳 480 g
バター(当然無加塩) 240 g
砂糖 200 g
12 g
卵(生地用) 100 g(約2個分)
パン用小麦粉 1000 g
レーズン(仕上げ用) 80粒 約50g
卵(艶出し用) 適量

少量で作りたい場合の目安:

10個分のレシピを見る(クリック)
材料 分量
サフラン 0.5 g
ブランデー 5 g
ドライイースト 6 g
牛乳 120 g
バター 60 g
砂糖 50 g
3 g
卵(生地用) 25 g
パン用小麦粉 250 g
レーズン(仕上げ用) 20コ 15g
20個分のレシピを見る
材料 分量
サフラン 1 g
ブランデー 10 g
ドライイースト 12 g
牛乳 240 g
バター 120 g
砂糖 100 g
6 g
卵(生地用) 50 g
パン用小麦粉 500 g
レーズン(仕上げ用) 40コ 25g

ちなみに、ルシア祭前日ぐらいから、ちまたの安いレーズンが軒並み店頭から消えるので、できれば早めに買っておこう

泣く泣くお高いオーガニックレーズンを買う羽目に陥ってしまう。

作り方はだいたい10工程

1. サフランを浸ける

まず、サフランを細かく刻んでブランデーに浸ける。これは最低でも30分前、できれば前日に済ませておくといい

サフランの鮮やかな色と香りが酒に溶け出していく様子は見ていて楽しい。この工程がルッセカットの黄金色を生み出す。

2. 粉と材料を混ぜる

まずは、粉と砂糖、イースト、そこに塩を加えて粉だけで全体を混ぜる。

次に、40℃程度に温めた牛乳、溶かしたバターを加える。

生地を混ぜる工程
左上のスウェーデンで買ったレシピ本を参考にした

粉っぽさがなくなるまで混ぜればOK。ここではしっかりこねる必要はない。

3. 生地を混ぜる

サフランを浸けた酒、卵を加えてさらに混ぜる。

サフランを入れる工程
液体のサフランを入れていく

最初は赤いが、

サフランを入れた後の生地
生地が一気に黄金色に変わる

生地がひとまとまりになったら、そのまま室温で30分置く。(この時期のスウェーデンは暖房が効いて暖かい部屋の想定)

その後、軽く丸め直してさらに30分室温に置く。もう一度丸め直したら、ボウルにラップをかけて冷蔵庫へ。

ひとまとまりの生地
表面に張りがあるようにまとめて、ラップをして乾燥を防ぐ

4. 低温発酵(半日〜1日)

冷蔵庫(7℃前後)で半日から1日寝かせる。この間に生地がゆっくりと発酵し、グルテンが形成される。僕は前日の夜に仕込んで、翌日の昼~夕方に焼くことが多い。

朝に焼いてもよいし、朝に仕込んで夕方に焼いてもよい。
あまり神経質にならなくてもよいのでスケジュールが柔軟になるのも低温発酵の良いところだ。

発酵後の生地
生地が1.5〜2倍に膨らんでいれば発酵は順調だ

5. 復温と分割

冷蔵庫から出して30分ほど置き、生地を室温に戻す。その後、40等分する(1個あたり約50g)。

生地を切り分ける工程

6. 成形

各生地を40cmほどの長さに伸ばし、S字型に成形する。渦巻きの中心にレーズンを1個ずつ押し込む。

S字を作る工程

S字の形は最初は難しく感じるかもしれないが、何個か作るうちにコツがつかめてくる。

成形後の状態

7. 二次発酵

天板に並べ、布巾をかけて室温で40分〜1時間、再び1.5〜2倍の大きさになるまで発酵させる。

焼く30分前くらいからオーブンを220℃に予熱する。

8. 焼成

オーブンが予熱完了したことを確認してから、溶き卵を刷毛で塗る。

焼く直前の状態
焼く直前に卵液を刷毛で塗る

220℃で8〜10分焼く。表面がきつね色になったら完成だ。

焼いているときの状態

オーブンから漂うサフランの香りが部屋中に広がる。この瞬間がたまらない。

9. 完成

焼き上がり直後

網の上で冷ます。熱々のルッセカットは柔らかく、ほんのり甘い。サフランの香りが鼻を抜ける。

食べてみて

ICAで売っているルッセカットも美味しいが、やはり焼きたては格別だ。
外側はわずかにカリッとして、中はふんわりしっとり。サフランの香りが口いっぱいに広がる。

売っているものと比べてバターをふんだんに入れているのでコクと水分量が違う

Pressbyranのるっせかっと
こっちにも恵方巻みたいなノルマはあるのかな?

レーズンの甘みとのサフランの香りのバランスも絶妙だ。日本ではあまり食べることのない味で、グリューワインと一緒に食べるのが最高のSwedish Wayになる。

おわりに

ルッセカットは見た目も華やかで、作る過程も楽しい。低温発酵法を使えば、パン作り初心者でも比較的簡単だ。
前日に仕込んで、翌日ゆっくり成形して焼く。このリズム、オーブンがあることが標準なスタイルが、北欧の暮らしに合っている気がする。

12月の暗い夜、焼きたてのルッセカットとワインがあれば、それだけで幸せな気分になれる。スウェーデンの人々が何百年も大切にしてきた味を、自分の手でやってみては?

あなたもぜひ、ルッセカットを焼いてみてほしい。